Perverse



「福岡だぁ!」



空港から出ると、特に空気なんて変わらないのに、両手を広げて深呼吸してしまう。



無意識に食べ物が美味しい所は空気も美味しいと思っているせいだろうか。



着いたばかりなのにお昼ご飯と晩御飯に思いを馳せているあたり、完全に恋する乙女とは掛け離れていると自覚する。



「三崎!行くぞ!」



ぼんやりしている間に柴垣くんは早々にタクシーのトランクに荷物を積み込もうとしていた。



「待って!」



慌ててキャリーを引っ張り駆け寄ると、運転手よりも先に私の荷物を取り積み込んでくれた。



「先にホテルに行くぞ。それから展示会場だ」



柴垣くんは運転手に行き先を告げてから私にそう言った。



「福岡店には行かないの?」



「今回は営業と企画は全部会場だ。福岡店には営業事務と物流事務しかいねぇ。荷物置いたらそのまま直で会場入りだとさ」



「そうなのね…」



いつもは電話での繋がりしかないけれど、出張の時は必ずと言っていいほど事務員さん達とは飲み会で交流するほどの仲良しだ。



思わず残念が口をつくと、



「心配すんな。夜は福岡店総出で飲み会だそうだ」



「本当に?嬉しい!」



柴垣くんはフッと笑って目を細めた。



「電話さえ繋がってれば昨日の夜に教えられたんだけどな」



「…そのネタ、まだ続くの?」



「今日1日は覚悟しとけ」



「……」



まだ1日始まったばかりですけど…。
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