私の遠回り~会えなかった時間~
ああ、この人はそこまで考えていたのか…。

「そう思って気丈に振る舞っていたつもりだったんだが、ストレスは溜まっていたんだろうな。撮影に立ち会えなくなった時には自分でも更に驚いたよ。撮影の後に知紗に切り出された別れ話がトラウマになってしまったんだな。撮影そのものより、それが終わる瞬間が恐怖だった。」

私はぼんやりと彬を見ていた。

「知紗が仕事に納得が出来たら、迎えに行くつもりでいた。」

私の目からは涙があふれる。

私は別れを切り出してから、自分の想像の中の彬と戦っていたんだ。

自分が作り出した彬という幻想と。

「さっきはごめんな。まだそういう意味では知紗と向き合うには時期が早いと思ったんだ。」

私は口からは何の言葉も出せない。

「俺は突き放しただけで、別れたつもりはない。」

念を押すように、彬は言った。

< 224 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop