私の遠回り~会えなかった時間~
彬…。

あまりにも驚いて、私は目を丸くしたままだ。

彬は初めて私が髪を切ってもらった時と同じように、私の後ろに立った。

「どういう事なの?」

鏡の中の彬はそんな私の言葉を無視した。

私はあの出会いの時を思い出す。

彬にとっては二度目の出会いかも知らないけれど。

私の今の髪型は仕事柄肩まであるストレートヘアになっていた。

「あの時はもっと長かったな。」

彬はその時と同じように、髪を横に広げてみたり、手ですいてみたりした。

「なあ、俺に任せてくれない?」

鏡の中の彬は急ににこりと笑った。

それはまるであの時をたどっているかのようで…。

「どうして、彬?どうして彬がここに居るの?」

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