ねぇ先輩、名前をよんで。
振りかえれば必死な顔をした女の子がいる。
誰だろう?
名前を尋ねても
彼女は目を彷徨わせるだけで何も言わない。
すると俺はあるものを見つけた。
『悠』
スマホのキーホルダーに彼女の名前が入っていた。
『名前、ゆうって言うの?』
なんて残酷なんだろう。
『ゆう。いい名前だね』
俺はやって来た彼女の名前に依存した。
その名前をたくさん呼んで
ゆう、と呼びながらいなくなった優に
名前を重ねて抱きしめた。
ゆうちゃん。
俺は彼女を優の変わりにしている。
最低な人間だ。
それなのに彼女は毎日ここにやって来る。
「春先輩」
走って俺のところにやって来て、
行き場のない思いをいつもゆうちゃんが支えてくれる。