君の日々に、そっと触れたい。
「李紅、具合はどう?」
そう優しく伺いながら、李紅のお母さんが部屋に入ってきた。
「よかったらこれどうぞ」
そう上品に笑いながら、私たちには紅茶とクッキーを出してくれた。
「わーい、ありがとおばさん!」
「あ…ありがとうございます」
ぎこちない挨拶に柔らかく微笑んでくれた李紅のお母さんは、紅茶と一緒にお盆に載せていた水の入った透明のコップを李紅に差し出した。
「李紅、お水飲める?」
「………んー……」
「少しだけでいいから。たくさん汗かいたし、脱水症状起こしちゃったら困るでしょ?」
お母さんが困ったような顔をすると、李紅は渋々といった様子でコップを受け取った。
しかしゆっくりと二、三口飲むともういいとお母さんにコップを突き返してしまった。
たったそれだけの動作なのに、酷い顔色でぎゅっと辛そうに硬く瞼を閉じる李紅に、私は唖然としてしまった。
───水も飲めないほど具合悪いの………?
こんな状態で明日あの海辺に行こうなんて、無茶すぎる。
それなのにさっき行くと断言した李紅は、適当に言ったわけでもなければ、無謀なわがままを言っている感じでもなかった。
まるで”いつものことだから大丈夫”と、確信しているみたいに。
やっぱり今までにもこうやって、酷い体調を隠して私と会っていたりしていたのだろうか。