君の日々に、そっと触れたい。
……そう紡がれるはずだった言葉は、李紅の「桜」と、強く私の名前を呼ぶ声に遮られた。
「…………ごめん。俺今日はちょっと疲れちゃった。……もう寝よう?」
そう苦笑いをした李紅の顔色は、まだあんまり良くなかった。
───……李紅は、ずるいよ。
そんなはぐらかし方をされたら、もう問い詰めらない。
それを分かっていて、わざと。
いつも、いつも。
「……………うん」
そう頷けば、李紅は申し訳なさそうに「ありがとう」と笑った。
それから李紅はベッドに、私は床に、二人並んで布団に入った。
照明を消すと、李紅は一言も発さずに、私に背を向けてしまった。
もしかしたらもう、眠ってしまったのかもしれない。
どうしてなんだろう。
昨日はあんなに近くに感じたのに、隣で眠っている今日の方が、遠く離れているように感じるなんて。