御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
鷹凪は奏の肩を抱いたまま、横断歩道を渡り、選挙事務所へと突き進んだ。

手早く傘を畳むと、今度は奏の手を取り建物の奥へと進んでいった。

中にはスタッフやボランティアが多く働いていて「先生、お疲れ様です」「お帰りなさいませ」と口々に頭を下げた。

鷹凪は愛想のよい笑顔で「ただいま」「ありがとう」と労ったあと、颯爽と彼らの間を通り抜け、奏を連れて奥の部屋に入った。

彼の執務室兼応接室。ボランティアという立場ではなかなか入れないその部屋がどんなところなのか、気にはなっていたのだが、飾り気のない至ってシンプルな部屋だった。
大きめの執務卓と、ソファとローテーブルが置かれているだけ。

鷹凪は部屋のドアを閉めると、一歩踏み出して奏との間合いを詰めた。

驚いた奏は逃げるようにしてうしろへとふらふら下がるけれど、あっという間にドアに背中がついて、逃げ場を失ってしまった。

目の前に立ちふさがる鷹凪の姿に、奏はごくりと息をのむ。

けれど、そんな奏を追い詰めるように鷹凪がいっそう近づいてきて――。

体が触れ合うくらいの近距離で、凛々しい瞳が一心に奏を見据え、眩暈がするほど甘いひと言を紡ぎだした。

「君と結婚したい」
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