御曹司と契約結婚～俺様プレジデントの溺愛に逆らえません～
「こんな生活をしたかったわけじゃ……」

ソファに座ってお茶を飲みながら、奏は深いため息をついた。

部屋の中央にあるダイニングテーブルには、今日もラップのかけられた夕食の品々が並んでいる。
けれど時刻はもう二十二時、おそらく今日も帰ってこないつもりなのだろう。

どんなに頑張っても、鷹凪に出来立てのおいしいご飯を食べてもらうことはかなわない。
もうすっかり冷え切って乾いてしまっている。

「……寂しい」

お金と時間は、山ほどある。けれど、一番望んでいたはずの人の温もりが感じられない。

母親と一緒に暮らしていたときは、寂しいなんて思わなかった。
それなのにこの新居ときたら、やたら綺麗でだだっ広くて、孤独感を冗長させる。

「幸せにするって言ったのに……公約違反だわ」

あきらめたように目を閉じて、ソファにゴロンと体を横たわらせたとき。

「誰が公約違反だと？」

廊下の方から声がして、驚いた奏は飛び起きた。

いつの間にか、鷹凪が帰ってきている。ネクタイを緩めながら、コートとバッグを乱暴に奏の対面にあるソファの上へと投げ捨てた。
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