御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
篠田が予約した旅館は、お忍びといった言葉がよく似合う、慎ましやかな、それでいて気遣いの行き届いた旅館だった。

今度こそ奏は帽子とマスクとサングラスをしてチェックインをする。

ふたりを部屋へ案内したあと、篠田は「明日の朝六時に迎えにきます」そう言い残して去っていった。
朝一で次の仕事が待っているらしい。

「慌ただしくて悪いな」

「いえ、そんなこと……」

奏からしてみれば、こんな小旅行が出来るなんて思ってもみない幸運だった。
常に忙しい鷹凪は、新婚旅行はもちろん、日帰りデートすらする時間がない。

運ばれてきた豪勢な会席料理を食べながら、奏はぽつりぽつりと話始めた。

「初めて、ですね。こうしてふたりで出かけるの」

「……言われてみれば、そうだな。そもそも、誰かと温泉旅館にくること自体、何年ぶりだろう……」

鷹凪は顎に手を添えて考え始める。
きっとずっと忙しい日々を過ごしてきて、奏と知り合うずっと前から旅行がご無沙汰だったのだろう。

そもそも、どうして鷹凪はこんなにも忙しくて大変な仕事を選んだのだろうか。
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