御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
その日の夜、奏の携帯端末が震え、ディスプレイには『小田桐美影』の文字が映し出された。
『奏さん? 大丈夫?』
聞こえてくるのは、心配そうな美影の声。
はっきり言って、全然大丈夫ではない。
ずっと泣いては伏して、泣いては伏してを繰り返している。
けれど、大丈夫でないのは美影も一緒だろう、彼女だって酷いことを書かれたのだから。
「……はい。美影さんこそ」
『私は全然大丈夫よ。あんな記事、全部、デタラメだってわかってるもの』
夫のことを一ミリも疑っていない、そんな毅然とした声だった。
それこそが妻のあるべき姿だと思い、奏は美影のことが眩しく見えた。
鷹凪のことを疑ってしまった自分は、なんと愚かだったのだろう。
ただ家の中で泣いていることしかできなかった自分が不甲斐なくて情けない。