冷酷な騎士団長が手放してくれません


「ソフィア様!!!」


その時、突如馬車のドアが開け放たれる。


同時に聴こえたのは、馬の蹄の音だった。


驚いたソフィアは、ドアの向こうに目を向ける。


そこには、馬車と並行するように馬を操っているリアムの姿があった。




「リアム……? どうして……」


「ソフィア様、早く! 早く、こちらに来てください!」


今までに見たことがないほど必死の剣幕のリアムが、手綱を操りながら全力で手を伸ばしてくる。


ソフィアは、無我夢中でドアの方へと寄ろうとした。だが、指と指が触れ合う直前で、泥に車輪を取られた馬車が、バランスを崩して大きく跳ねる。


「きゃあっ!」


「ソフィア様!」


馬を寄せるスペースを失ったリアムの手が、離れてしまう。


ふと開いたドアの外を見れば、断崖絶壁の崖はすぐそこまで迫っていた。恐怖に打ち震え、ソフィアは「ひっ」と声にならない声を上げた。


すると、崖と馬車の間に器用に馬を滑り込ませたリアムが、もう一度手を伸ばして来る。


「ソフィア様、俺を信じて!」


「リアム……」


「もう一度、手をこちらに! あなたのことは、絶対に俺が守る!」






リアムの強い物言いに惹きつけられるように、ソフィアは全力で手を伸ばした。


触れ合った指先を伝い、リアムが手首をきつく握る。


そして、ソフィアを自分の方へと引き寄せた。
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