冷酷な騎士団長が手放してくれません
リアムはソフィアを抱き寄せ馬に乗せると、手綱を引いて馬を制止させた。


その直後に、今しがたまでソフィアの乗っていた馬車は崖から車輪を外し、ぐらりと傾いて闇間へと吸い込まれていった。


谷底に打ち付けられた馬車が崩壊する音が、激しい雨音に混ざり山間に響き渡る。






ソフィアは震えながらリアムの胸に身を寄せ、その無惨な音を聴いていた。恐怖で、この身がどうにかなりそうだった。


激しい雨の中、リアムはそんなソフィアをしっかりと胸に抱く。


「ソフィア様、もう大丈夫です」


頭上から、優しい声が降って来る。リアムが、頭に唇を寄せる感触がした。二本の腕は、ソフィアをきつく閉じ込めて離さない。


「リアム……」


とてもではないが、言葉にはならなかった。激しい雨に打たれながらも、ソフィアは全身全霊でリアムの温もりを感じていた。
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