冷酷な騎士団長が手放してくれません
リアムの瞳に射抜かれ、ソフィアの胸がドクンと跳ねた。


忠誠と深い愛情を秘めたその眼差しを受けて、胸が苦しくなる。


「本来は死んでいるはずだった俺は、あなたに一生を捧げる覚悟をしました。ただひたすらに、あなたのお傍にいて、あなたを守り抜くつもりでした。あなたが恋をしようと結婚をしようと、下僕としてあなたの全てを受け入れお仕えするはずでした」


微かに、リアムが笑みを浮かべた。春の木漏れ日のような、暖かな微笑だった。


「けれど……」


ソフィアの右手の傷痕に、リアムは唇を寄せる。その光景は洗練された絵画のように美しく、幾度見てもソフィアの心を揺さぶる。


「あなたへの想いが募るにつれ、永遠にあなたを俺だけのものにしたいという欲望が生まれた。あなたは、死んでいた俺の野心を呼び覚ましてくれた。だから戦争に行って、この国に真の平和を導かねばならないのです」






ソフィアには、リアムの言っていることの全ては理解できなかった。ただ彼が、戦争に行くという揺るぎない覚悟と、ソフィアへの確かな愛情を持っていることだけは理解できた。


リアムの唇からようやく放たれた右手で、ソフィアは瞳に浮かんだ自分の涙を拭った。そして、微笑を浮かべる。


「分かったわ。もう止めない。その代わり、必ず帰って来て」


「はい」


整った顔に穏やかな微笑を携え、リアムが答える。リアムの背後でキラキラと輝く湖と相まって、その姿はこの世の何よりも尊いものに思えた。






「リアム……」


抑え込んでいた想いが、溢れ出す。再び滲んだ涙が、ソフィアの頬を伝った。


「あなたを、この世の誰よりも愛しています」

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