冷酷な騎士団長が手放してくれません
ソフィアの全身が、ぶるりと震えた。


歓びと驚きが混ざり合った複雑な感情が、胸の内にひしめいている。





「実はあの予言の書には、続きがあったのです。遠い昔に誰かが持ち去ったために、私たちはその内容を知ることが出来ませんでした。ですが、先日その続きがようやく見つかったのです」


穏やかな口調で、王妃が言った。


「そこには、こう書かれていました。――ただしその王太子が真実の愛に目覚めた時、運命は変わり、この国に真の平和が訪れると」


震えるソフィアを労わるように、王妃は優しげな眼差しを絶やさない。


「あなたには、言葉では言い尽くせないほどに感謝しています。ソフィア・ローレン・アンザム。あなたは私達の息子の命を救い、この国をも呪われた運命から救い出してくれました」







その時、王妃の言葉が合図となったように、玉座の控えから人影が姿を現した。


まるでこの世の光を全て吸い込んだかのような、輝く金色の髪。深海のように、どこまでも深く魅惑的なブルーの瞳。甘美な果実を彷彿とさせる、形の良い唇。


ソフィアの前にゆっくりと歩んで来たのは、獅子の紋章が胸もとで雄々しく輝く、赤い軍服を着たリアムだった。


ソフィアの瞳から溢れた涙が、頬を伝い、ドレスの上にこぼれ落ちた。


ソフィアの前で足を止めたリアムは腰を落とし、とめどなく溢れるソフィアの涙を指先で拭った。






「ソフィア様。あなたにお会いするのが、遅くなり申し訳ございませんでした」


心地よい波長を奏でる彼の声は、言霊となってソフィアの胸に安らぎをくれた。


「リアム……様……」


歓びのあとに訪れたのは、恐怖だった。ソフィアは震えながら、リアムに向かって頭を垂れる。
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