冷酷な騎士団長が手放してくれません
二人の絆


アレクサンドル・ベルは世界に名だたる著名な作家で、その名声は貴族階級に留まらず、文学に馴染みのない庶民にまで浸透している。


処女作の長編『獅子王物語』は言わずと知れた名作だが、冒険活劇『四銃士』も人気で戯曲化もされ話題になった。


そのアレクサンドル・ベルの新作『仮面の王子』を、ソフィアは夢中で読みふけった。


長い話だったが、ランプの灯を頼りに夜も読み続け、ようやく読破した時には既に朝の七時だった。


「なんて面白い話なのかしら……」


天蓋付きのベッドに身を投げ出した状態のまま、徹夜のせいでハリを失った顔で、ソフィアは感嘆のため息を吐く。








『仮面の王子』は敵国から身を守るため、地下に幽閉されて育った美しい王子の物語だった。


息もつかせぬ展開で、とても老年の作家が書いたとは思えない斬新な作品である。


(今すぐに、この感動を誰かと分かち合いたいわ。そうだ、殿下に感想を書いた手紙を送ろう)


そう思い立ってベッドから身を起こしたものの、ソフィアは思いとどまる。


ニールの、あの熱い眼差しを思い出したからだ。


と、そこでドアが激しくノックされた。

< 50 / 191 >

この作品をシェア

pagetop