恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「あ・・・」

・・・ない。
腕時計がない!

あれ、留め金が緩んでたから、いわば壊れかけの腕時計だったんだけど・・・でも私は携帯を持っていないから、外出時に腕時計をつけることは、私にとっては当たり前のことで・・・。
さっきは「とにかくここを逃げ出さなきゃ!」という一心で、バタバタと岸川さんちを出たから、腕時計のことまで頭が回ってなかった。
それくらい、私には心の余裕がなかったと言える。

腕時計は高校3年間を共に過ごした、思い出のあるお気に入りだった。
だから近いうちに修理に出すか、ベルトを変えて使い続けようと思っていた矢先だっただけに、少なからずショックを受けてしまった。

いや、昨夜からの出来事を思えば、私にとってはダブルショックだ。

< 104 / 483 >

この作品をシェア

pagetop