恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「この話には続きがある」
「えっ?あ・・と、どんな」
「先輩が“設計した”マンションは完成した。でもそのマンションは、耐震基準を満たしてないことが完成後に分かったんだ」
「まぁ!」
「さらに悪いことに、会社はそのことを隠したまま販売したんだ。結果、マンションの住民から訴えられて、賠償金を支払うハメに陥った。2年前の話だ。その影響で会社は倒産したよ。実は先輩設計士が“自分の”設計案として取り入れた、そのわずかな5パーセントというのが、建築上、致命的なミスを招いていたんだ。他人の案を盗んだことを隠すことばかりに気を取られて、住民の安全に気を配るという基本的、且つ肝心なことを考えてなかった先輩は、設計の仕事を干されたのはもちろん、建築業界に身を置くことすらできなくなったって噂を聞いたとき、俺は思ったんだ。“あぁやっぱ悪いことはしちゃいけない”と。“悪いこと”っていうのは、自分さえよければ他人を傷つけても、他人がどうなろうが一向に構わない生き方をすること」
「あ。あのとき岸川さんが言ってた・・」
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