ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
私はただダンス体験を希望しただけで、着替えまでするつもりはなかったのだが、満面の笑みで早口で語りかけてくるおばさんに押されて流され、紫色の衣装を指差した。

これも滅多にできない経験だと納得することにして、手伝ってもらって衣装に着替える。

姿見の前に立てば……ほう。なかなか、いいじゃない。


ダンサーのお姉さんたちのようなセクシーさはないが、大胆に肌を露出させれば、こんな私でも少しは艶めいて見えるのではないだろうか。

頭には透け感のあるベールを被り、私の胸のサイズには合わない少々窮屈なブラには、キラキラとした飾りが垂れ下がるようにあしらわれている。

ヒラヒラとして薄い生地のスカートは足首までと長めで、スリットが太ももの上まで入っていた。

腰を振ってみれば、飾りにぶら下がるたくさんのコインがシャラシャラと音を立て、おばさんが「ブラボー!」と拍手した。

アラビア語でペラペラとなにかを話しかけながら、身振り手振りで『腰つきがいい』というような褒め方をしてくれる。


腰つきは……確かに優れているのかもしれない。

小学生の頃、校内のフラフープ腰回し大会で、毎年優勝していたことを思い出した。

優勝といっても、全校生徒数は常時二十人ほどだけど。
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