ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
酒も飲んでいないのに、いい気分で調子に乗った私は、勝手に広間を踊り歩く。

すると後ろにダンサー三人がついてきて、なぜか私がこの一座の、リーダー的な役割を果たしていた。


広間の端から端までを楕円を描くように移動して、元の場所に近づいた時、思わぬアクシデントが起きてしまう。

衣装のブラジャー型のトップスが少々きつめだとは思っていたのだが、ダイナミックに腰を振った瞬間に胸が左右に大きく揺れて、ブラのフロントホックが耐えきれずに壊れてしまったのだ。


これはまずい!と慌てて両腕で胸を隠したけれど、披露してしまったかもしれない。

私のすぐ目の前に座っているのは、うちの社の男性社員ふたりで、ひとりは『あ』の形で口を開いたまま固まっていて、もうひとりは鼻から赤い液体を垂らしていた。

こんな私でも女性としての羞恥心は持ち合わせているので、彼らの反応に瞬時に顔が熱くなり、ダンスのせいではない汗が額に滲む。


前屈みの姿勢でどうしようと固まっていたのは、ほんの二、三秒ほど。

私の背にはスーツのジャケットがかけられて、「早く着て!」と焦ったような声をそばに聞いた。

そっと顔を上げれば、しかめ面をしたよっしーがいて、私を隠すように腕を広げて立っている。


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