ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「あ、ありがとう」とお礼を言ってジャケットに腕を通し、前ボタンを閉めてはだけた胸を完全に隠した。


よっしーにも、見られてしまったよね……。

彼には服の上から胸を揉まれたこともあるけど、見られたことはない。

そのどちらが恥ずかしいのか判断はつかないが、「いやー、ごめんごめん」と頭を掻いて、羞恥心をごまかそうと笑った。

照れ笑いする私に彼はため息をついて眉間の皺を解き、「まったく……」と呆れたように言う。


「夕羽ちゃんはもう部屋に戻りなさい。俺以外の男の前で、裸を見せるのは禁止だよ」


男らしくきっぱりと言い放ったその言葉に、胸を熱くしかけた私だが、直後に引っかかりを感じて目を瞬かせる。

助けてもらっておきながら申し訳ないけど、ツッコミを入れてもいいだろうか?

『よっしーにも裸を見せる気はないからね』と心の中で呟いて、火照る顔を彼から背けた。


曲が変わり、ダンサーがまた場を盛り上げる中、私はゲストルームに戻っているようにと彼に命じられ、広間から追い出されてしまった。

もうお腹はいっぱいだし、会話にも混ざれないからそれでも構わないけど、部屋に戻る前にまずは着替えなければ。

そう思い、衣装を貸してくれたおばさんのいるダンサー控室に向かったのだが、広すぎる屋敷の廊下は複雑に入り組んでいて、見たことのない場所に出る。
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