ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
これは完全に迷子だね……。


私が今歩いている場所は外廊下のような半室内の通路で、中庭に面している。

ライトアップされた噴水の周囲に南国の花が咲き乱れて、とても綺麗だ。

これは一見の価値ありということで、迷って正解……ということにはならない。


正方形の中庭と外廊下は全てのものがシンメトリカルな造りになっており、景色を見ながら外周をぐるりと回っているうちに、方向感覚まで失ってしまった。

どこからここに出たのかもわからない。


心細くなり、羽織っているよっしーのジャケット生地を握りしめて立ち尽くしていたら、前方に人の姿が見えた。

王子と似たような白い民族衣装を着ている青年だが、装飾性のない簡素な衣服なので、使用人だと思われる。

助かったと喜んで駆け寄り、呼び止めれば、アラビア語でなにかを問いかける彼は、人の良さそうな笑顔で私と向かい合った。


彼はアラビア語しか話せないようで、日本語のみの私との会話は、小学生レベルの英単語と、身振り手振り、それと目力で行われた。

私は王子の客で、取りあえず先ほどの広間まで戻りたいということを必死に伝えようとする。

着ている衣装を指差して、ベリーダンスを踊ってみせ、「バック」と連呼して彼の手を取り、「レッツゴー!」とカッと目を開いて訴えた。
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