ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
すると「オーケー」と理解してくれたふうの彼であったが、なぜか照れ笑いを浮かべており、私を柱の影へと誘導する。

そして私の背後に回ると、衣装のスカートを捲り上げようとしていて……。


え、なにこの状況。

もしかして、とんでもない誤解が生まれてる!?


どうやら彼は私が誘惑してきたと勘違いをして、一夜の過ちに応じようとしてくれているようだ。

慌てて彼に向き直り、「そうじゃなくって!」と日本語で否定したら、拙い英語で「オー、ソーリー」と答える彼が、なぜか私を囲うように柱に両腕を突き立て、唇を近づけてきた。

今度はどんな勘違いだ。『まずはキスからでしょ』とでも、私が言ったと思ったの?


「ちょっと待って、それも違うから!」


焦る私が彼の口を両手で塞いでキスを未然に防げば、彼は不思議そうに目を瞬かせている。

この人は悪人ではなく、うまく伝えられない私の方が悪いのだ。

それでも見知らぬ男性に襲われる恐怖に涙目になり、助けを求めて「よっしー!」と大声で叫んだら、その声が中庭を通って周囲の壁に反響した。


その直後に廊下を駆ける足音が聞こえて、本当に彼が現れるから、驚きのあまりに私の涙は引っ込んで、目を丸くした。


「夕羽ちゃんを放せ!」


なにその登場の仕方。ヒーローみたい……。
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