ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
世間では休日を楽しむ人が多い中で、今日も一日仕事に追われるふたりは気の毒だ。

ふたりというのは、良樹ともっくんである。


チケットを受け取る場所は、もっくんの自宅でという話であったけれど、今朝方、場所の変更を告げるメールがあった。

今日も仕事が忙しいということで、【悪いけど、俺の職場まで頼む】という内容で、住所が添えられていた。

それは別に構わない。移動距離はむしろ自宅に出向くより近いし、タダでもらい受ける身としては、なるべくもっくんの都合に合わせたいと思う。


電車とバスで移動して、最寄りのバス停からはナビゲーションアプリを使用して、指定された住所へと徒歩で向かう。

二階建ての建物がひしめく住宅地は、昭和の雰囲気が漂う古い戸建の中に、新しいお洒落な外観の家がちらほらと見受けられた。

縦縞のビニールの庇がどこか懐かしい、こじんまりとした食料品店の角で、私は一度立ち止まる。

ナビを確認してから、その角を直角に西へと曲がった。


この先を道沿いに五十メートルほど進めば、もっくんの職場にたどり着くはずだ。

金属加工の仕事をしていると、かなり前に聞いた覚えがあり、町工場のような建物を前方に探していた。

すると、それらしき建物を左手に見つける。

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