ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています

驚きのあまり目と鼻と口を全開にして固まる私は、二台のトラックの前に突っ立ったまま、すぐには動けない。

工場内からは再び作業音が鳴り始め、消されそうになるふたりの会話に耳を凝らしていた。


昨日、事業部の社員が失礼な対応をしたことは、良樹が謝罪に来たことで許してもらえたようだけど、彼が話だけでも聞いてほしいと繰り返し頼んでも、もっくんは門前払いのようにそれをはねつけている。

そんな平行線の会話が三往復ほど続いて、もっくんの声に徐々に苛立ちが増すのを感じた。


「いくら頼まれても無理だから。もう帰ってください！」ともっくんが声を荒げたところで、私はやっと驚きから回復し、二台の軽トラックの隙間を通り、恐る恐るふたりのもとへ。

紺色のスーツ姿の良樹と作業着姿のもっくんは、一メートルほどの距離を置いて向かい合っている。

「あの……」と声をかければ、振り向いた良樹はギョッとした顔をして、もっくんは「ああ夕羽ちゃん、いらっしゃい。呼び出して悪かったな」と怒り顔から一転、笑顔になり、私を歓迎してくれた。