ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
まぁね、みんなが私たちの交際を温かい目で見てくれて、シンデレラストーリーを期待してくれる気持ちはありがたく受け取るよ。
この会社の社員は、いい人ばかりだ。
それでも正直なところ、結婚という二文字が、それこそおとぎ話のように聞こえて、現実的な響きを感じない。
良樹と別れるつもりはないけれど、彼の妻になるという未来が想像できなかった。
それはなぜだろう……。
自宅で笑い合っている時の彼は、一番身近に感じる存在なのに、こうして社長の恋人だからと私まで持て囃されては、背中がむず痒くて仕方ない。
私と彼の背景にあるものの違いを、かえって感じてしまうんだよね……。
五階の廊下に台車を押して、エレベーターに向かう。
次の階でもきっと、ちやほやされて質問攻めに遭うのだろうと、二度目のため息をついたら、廊下の角を曲がったところでバッタリと良樹に出くわした。
いや、バッタリではない。
「夕羽ちゃん、捜してたんだ!」とキラキラした目で言われて、手首を掴まれる。
先ほど、鬼の仮面を被り直せと思ったばかりだったので、「社長、私は浜野です」と、社内での呼び名を真顔で指摘したら、不思議そうな目で見られた。
「なに言ってんの? 夕羽ちゃんの名字は子供の頃から知ってるよ。そんなことより、いいニュースがあるんだ!」
この会社の社員は、いい人ばかりだ。
それでも正直なところ、結婚という二文字が、それこそおとぎ話のように聞こえて、現実的な響きを感じない。
良樹と別れるつもりはないけれど、彼の妻になるという未来が想像できなかった。
それはなぜだろう……。
自宅で笑い合っている時の彼は、一番身近に感じる存在なのに、こうして社長の恋人だからと私まで持て囃されては、背中がむず痒くて仕方ない。
私と彼の背景にあるものの違いを、かえって感じてしまうんだよね……。
五階の廊下に台車を押して、エレベーターに向かう。
次の階でもきっと、ちやほやされて質問攻めに遭うのだろうと、二度目のため息をついたら、廊下の角を曲がったところでバッタリと良樹に出くわした。
いや、バッタリではない。
「夕羽ちゃん、捜してたんだ!」とキラキラした目で言われて、手首を掴まれる。
先ほど、鬼の仮面を被り直せと思ったばかりだったので、「社長、私は浜野です」と、社内での呼び名を真顔で指摘したら、不思議そうな目で見られた。
「なに言ってんの? 夕羽ちゃんの名字は子供の頃から知ってるよ。そんなことより、いいニュースがあるんだ!」