ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
それなのに良樹は「違うよ。今から昼休み。もう総務部長には話をつけてあるから大丈夫」と言って、私から台車を奪い取る。
そして通りすがりの他部署の男性社員に、それを押しつけた。
「これを備品保管庫に戻しておいてくれないか。急いでいてね。すまないが、よろしく頼む」
突然台車を預けられたその人は驚いていたが、社長に頼まれて嫌と言えるはずがなく、「わかりました」と一礼すると、台車を押して歩き去った。
「まだ全部署を回ってないのに!」という私の訴えは「明日やればいいよ」とサラリと流されて、手を引っ張られるようにして廊下を走らされる。
「そんなに急いでどこに行くつもり?」と問えば、「美味しい蕎麦屋」と振り向かずに言われた。
「夕羽ちゃん、この前、蕎麦が食べたいと言ってたろ。急げば行って帰ってこれる」
その言い方に、私は走りながら目を瞬かせる。
三時間も空き時間があるのに、急がなくてはならない蕎麦屋とは、まさか……。
それから十五分後の私は、「そんなことだろうと思った……」と呟いていた。
その声は、エンジン音とプロペラが風を切る爆音に消されて、隣の席の良樹まで届かない。
そして通りすがりの他部署の男性社員に、それを押しつけた。
「これを備品保管庫に戻しておいてくれないか。急いでいてね。すまないが、よろしく頼む」
突然台車を預けられたその人は驚いていたが、社長に頼まれて嫌と言えるはずがなく、「わかりました」と一礼すると、台車を押して歩き去った。
「まだ全部署を回ってないのに!」という私の訴えは「明日やればいいよ」とサラリと流されて、手を引っ張られるようにして廊下を走らされる。
「そんなに急いでどこに行くつもり?」と問えば、「美味しい蕎麦屋」と振り向かずに言われた。
「夕羽ちゃん、この前、蕎麦が食べたいと言ってたろ。急げば行って帰ってこれる」
その言い方に、私は走りながら目を瞬かせる。
三時間も空き時間があるのに、急がなくてはならない蕎麦屋とは、まさか……。
それから十五分後の私は、「そんなことだろうと思った……」と呟いていた。
その声は、エンジン音とプロペラが風を切る爆音に消されて、隣の席の良樹まで届かない。