ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
同じように食器を片付けつつ、「誕生日パーティーの準備なら、心配いらないよ」とのほほんとした顔で言う。

「そうはいかないよ!」と声を大きくした私は、「できる限りのお祝いを全力でさせてもらう。これでも一応、恋人だから」と力込めて反論した。

するとチラリと横目で見られ、「一応じゃなく、紛うことなき恋人だよ」とたしなめられる。

それから付け足すように、訳のわからないことを真顔で言われた。


「けど確かに、対外的には曖昧な関係かもしれないな。そろそろ、それを正式なものにしないと。その意味で今日のパーティーは、もってこいの場になるだろう」


食洗機を稼働させた彼は、キョトンとしている私を見てクスリと笑う。

頭をよしよしと撫でながら、誕生会の準備の心配はいらないと言った理由について、私がわかるように説明してくれた。


「俺の誕生日パーティーは、知り合いを大勢呼んで、実家でやるんだ。毎年の恒例行事のようなものだよ。今回は三十歳の節目だから、いつもよりいくらか盛大にするらしい」


ああ、なるほど……と私は頷く。

三門家の御曹司の誕生会を、庶民の物差しで測って悪かった。
< 149 / 204 >

この作品をシェア

pagetop