ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「どうしてそんなにドライでいられるんだ。俺は一日のうち、二十三時間四十五分は夕羽ちゃんのことを考えているのに。夕羽ちゃんは俺のこと、どれくらい想ってる?」


頬を潰されてはなにも答えられないが、三時間くらいかと考えていた。

一日三時間、ひとりの男性のことで頭をいっぱいにすれば充分じゃないか。

ほぼ一日中、夢の中まで私を想う良樹の方がおかしいでしょう。

ほどほどにしてくれないと、いつか飽きられるのではないかと心配にもなる。


彼の手首を掴んで私の顔から外し、口の中のシュウマイを飲み込んでから「落ち着いて」と今日二度目の注意をした。

彼に酒を飲むように勧め、私も注ぎ足したばかりの湯飲み茶碗を持って一気に半分を喉に流し込む。

それから、少々の酔いと照れくささで顔を熱くして、「いやー、結構というか、私も良樹にかなり惚れてると思うんだけど……」と語り始めた。


「こうしてふたりでいるのは心地いいし楽しいよ。甘えん坊の良樹も、時々かっこつける良樹もどっちも好きだ。でもね、激しいギャップを感じて、ふと立ち止まって考える時がある。ああ、私とは全然違う人なんだ……ってね」


そのギャップを感じた時が、まさしくこの前の誕生会である。

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