ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
良樹の世界を否定するつもりはないけれど、こんな私がセレブ生活に馴染めるとは、今は少しも思えないし、覚悟も定まらない。
酔いが回ってきた頭で湯飲み茶碗に半分残る酒を飲み干して、本日三杯目を手酌した。
酢昆布をかじりながら頬杖をついて、横目で良樹をチラリと見れば、『私とは全然違う』と言われたことを気に病んでか、不安げな顔でこっちを見ていた。
捨て犬のような目で見つめられても、酔っているため、フォローの言葉は出てこない。
口から漏れるのはため息と正直な気持ちで、演歌の流れるテレビ画面に向けて、独り言のように呟いた。
「良樹が大好きだよ。まさか恋仲になるとは、子供の頃には少しも思わなかったよね。でも、恋愛感情のないあの頃の方が、良樹とのギャップを感じずにすんだかな。今は好きなのに、違いすぎて、なんだかね……」
私のひとり語りに答えてくれるのは、画面の中で歌う天童よしみではなく、左隣に座る真面目な顔をした恋人だ。
私の左手に右手を被せて強く握りながら、「なんだかって……?」と深刻そうな声で話の続きを促してきた。
私の口からは、あくびがひとつ。
今夜は酔いが回るのがやけに早く、意識が急速に霞がかる。
テーブルに置いた右腕に頭をのせるようにして、かろうじて問いかけへの返事をした。
「異世界の人と付き合ってる気分で、困っちゃうな……」
目を閉じた私に、逞しい二本の腕が回されて、体がふわりと浮くのを感じた。
心地よい揺れの中、ベッドに運んでくれるのかと思い、全てを彼に委ねて、私はまさに眠りに落ちようとしている。
意識を完全に手放す前に聞いたのは、ため息交じりの切なげな声。
「そんな悲しいこと言うなよ。俺を夕羽と同じ世界にいさせて……」
酔いが回ってきた頭で湯飲み茶碗に半分残る酒を飲み干して、本日三杯目を手酌した。
酢昆布をかじりながら頬杖をついて、横目で良樹をチラリと見れば、『私とは全然違う』と言われたことを気に病んでか、不安げな顔でこっちを見ていた。
捨て犬のような目で見つめられても、酔っているため、フォローの言葉は出てこない。
口から漏れるのはため息と正直な気持ちで、演歌の流れるテレビ画面に向けて、独り言のように呟いた。
「良樹が大好きだよ。まさか恋仲になるとは、子供の頃には少しも思わなかったよね。でも、恋愛感情のないあの頃の方が、良樹とのギャップを感じずにすんだかな。今は好きなのに、違いすぎて、なんだかね……」
私のひとり語りに答えてくれるのは、画面の中で歌う天童よしみではなく、左隣に座る真面目な顔をした恋人だ。
私の左手に右手を被せて強く握りながら、「なんだかって……?」と深刻そうな声で話の続きを促してきた。
私の口からは、あくびがひとつ。
今夜は酔いが回るのがやけに早く、意識が急速に霞がかる。
テーブルに置いた右腕に頭をのせるようにして、かろうじて問いかけへの返事をした。
「異世界の人と付き合ってる気分で、困っちゃうな……」
目を閉じた私に、逞しい二本の腕が回されて、体がふわりと浮くのを感じた。
心地よい揺れの中、ベッドに運んでくれるのかと思い、全てを彼に委ねて、私はまさに眠りに落ちようとしている。
意識を完全に手放す前に聞いたのは、ため息交じりの切なげな声。
「そんな悲しいこと言うなよ。俺を夕羽と同じ世界にいさせて……」