ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
ああ、そうか。これは言葉足らずな私が悪かった。

自分の落ち度に気づいて反省した後は、別れる気はないと言って安心させなければと口を開く。

「良樹、聞いて」


しかし勘違いしている彼は、「別れの言葉は聞かない」と話しをさせてくれない。

彼の胸を押すようにして体を少し離した私は、「いや、そうじゃなくてーー」と慌てて否定したが、なおも話を聞いてくれない彼がそれを遮り、真剣な顔をして言った。


「夕羽、俺と結婚して。同棲だけじゃ駄目だと気づいた。一刻も早く完全に俺のものにしないと、不安でたまらない。拒否しても無駄だよ。どんな汚い手を使っても、俺の妻にする」


彼の両腕に閉じ込められたまま、キッパリとした口調の脅迫めいたプロポーズをもらった私は、半開きの口で唖然としてしまう。


私を手に入れるためなら、悪党にもなるって……? おいおい、君はどこまで私に夢中なんだ。

そこまで言われたらもう、覚悟を決めるしかないじゃないか……。


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