ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
急におかしさがこみ上げて、吹き出して笑ったら、良樹がムッとした顔をする。


「俺は真剣にーー」

「わかってるよ。良樹の手を汚させたりしないから安心して。私も良樹が大好きで、これから先も一緒にいたいと思ってる」

「え? じゃあ……」


その顔の険しさは解け、期待に口元が緩んでいくのが見て取れた。

血色もよくなり、唇も頬も夕日に温められたかのように赤みがさしている。

覚悟を決めた私は、ニッと笑って決意表明をする。


「良樹の両親にもちゃんと挨拶するし、セレブパーティーにも参加するよ。良樹に恥をかかせないように、これから色々と勉強して努力しようと思う」

「それは、つまり……?」


ゴクリと唾を飲んで、続きを催促する彼に、私は笑いながら言った。


「良樹の嫁になってやるかな。私がそばにいないと、泣いちゃいそうだからね」


ホッとしたように「うん」と頷いて、早速目を潤ませる彼は、私の後ろ髪に手を当てると、急に顔を近づけてきて、強引に唇を奪った。

泣いているのをごまかそうとしても無駄だよ。私の頬まで濡らしているもの。

喜びの涙を流してくれるなら、私も幸せな気分になれるから、歓迎するけどね……。
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