ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
中になにかを仕込んでいたのかと、私も興味をそそられて、良樹の隣に並ぶと、父と一緒に花束を覗き込んだ。

数十本のバラの花を掻き分ければ、そこには五百ミリリットルサイズの酒の小瓶が隠されている。

良樹がズボッと引き抜いたそれには、紫色のラベルに、裏返しにした墨文字で『鍋山』と銘柄が書かれていた。


こ、これは……昨年の酒の世界大会で金賞を獲得した北九州の幻の銘酒、純米大吟醸、隠し酒の『裏鍋山』じゃないか!

私が一度味わってみたかった、プレミアものの日本酒だよ。

それを父にあげちゃうの!?

そのバラの花束は、本当は私のために持ってきたんだよね?


良樹が持つ酒瓶に手を伸ばした私だが、その手は父に払い落とされて、裏鍋山を奪われてしまった。

大事そうにそれを抱える父は、ニヤリと笑って良樹に言う。


「お前、わかってんじゃねぇか。見所のある男だ。娘はくれてやるから、今すぐ連れ帰ってくれ。夕羽がいたら、飲み干されちまう」

「父ちゃーん!!」と悲痛な叫びをあげた私は、心の中で文句をぶつける。


大事な娘だから、ホイホイくれてやれるかと言ったくせに、酒瓶一本と引き換えに連れ帰れとは、どういうことさ。
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