ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています


同棲を求められた日から、六日が過ぎた平日。

定時で退社した私は、コンビニで二十パーセント引きのシールが貼られたカツ丼と、サンマの蒲焼の缶詰を購入して帰宅したところだ。


誰もいないのに「ただいま」と言いながら、黒い大理石張りの広い玄関で安物のスニーカーを脱ぎ、高級スリッパは履かずに靴下のままで廊下を進む。

そう、ここはよっしーの自宅マンションで、六日前のあの日、結局私は同居に承諾してしまったのだ。

その原因が、この先にある。


リビングにキッチンダイニング、書斎や寝室などの部屋の前を通り過ぎ、長すぎる廊下の角をひとつ曲がった突き当たりのドアを開けた。

中に入って電気のスイッチを押すと、ムードのある青白いライトに照らされて浮かび上がったのは、バーのような空間。

L字型の黒いカウンターテーブルがあり、椅子は六つ。

カウンター内のお洒落なシルバーの棚には、様々な種類の酒瓶が並んでいた。

ゴクリと喉を鳴らした私は、カウンターの内側に入り、ズラリと並んだ日本酒の瓶の前で、今日はどれにしようかと迷う。


新潟産のすっきり辛口純米吟醸『九海山』にしようか、それとも山形産のやや甘口純米大吟醸『十五代』にしようか……。

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