ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
ここにある日本酒は私のために、よっしーが買い揃えてくれたもので、今は三十銘柄ほどが並んでいる。

その数は日を追うごとに増えていて、これが同居を承諾した理由である。


『夕羽ちゃんは日本酒が好きなのか。それなら俺の家で一緒に暮らせば、色んな銘柄が飲み放題だよ。全国の日本酒を取り寄せてもいい』


そんなおいしい誘惑をされたら、『即刻引っ越す。よろしく!』と言うしかないよね。

ただで飲み放題とは、さすがお金持ちだ。


心配だった家賃負担も、しなくていいと言ってもらえた。

というより、東京の一等地に建つ、この二十五階建ての高層マンション丸々一棟が彼の所有だと聞かされて、度肝を抜かれた。

最上階のこのフロア全部が彼の自宅となっていることにも唖然とする。

彼は天下の三門家の御曹司。

その資産は一体いくらなのか……ど庶民の私には想像もできないほどだということだけは理解できた。


今日はこれにしようと、選んだ日本酒の一升瓶を手に部屋を出る。

この部屋で飲むわけではない。

廊下を引き返して玄関を越えた先に階段があり、そこを上って二階へ。

マンションなのに、ここの構造は二階建ての一軒家のようだ。

そして二階の全部屋を自由に使っていいと、太っ腹な彼は、無償で贅沢を私に与えてくれていた。

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