ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
聞けば、赤坂の超一流料亭で、ライトアップされた日本庭園を眺めながら、鶏の水炊きがメインのコース料理を食べ、ビールや日本酒など、数種類の酒を飲んできたのだとか。
鶏の水炊きか……。
意外と庶民的だと思ってしまったのは、間違いだったとすぐにわかる。
「大体こんな感じの料理だった」と、彼がスマホで料亭のホームページを検索して見せてくれたのだが、芸術的に美しくて味の想像もつかない和食フルコースが【おひとり様、五万円〜】と書かれていた。
まじか……と値段に驚いて感想も言えない私が、サンマの蒲焼を箸でつまんで食べようとしたら、隣で口を開けている男がいる。
その口に入れてあげたら、「おいしい!」と笑顔で咀嚼していた。
「え、本当に?」と、つい聞いてしまう。
五万円以上の高級和食フルコースを食べたばかりの人が、缶詰のサンマをおいしいと思えるのが不思議だった。
けれども、にっこりと弧を描くその瞳に嘘をついているような雰囲気は見られず、私の箸を奪うと、今度は彼が私に食べさせてくれた。
「水炊きより、夕羽ちゃんとひとつの缶詰を分け合って食べる方が、ずっとおいしく感じられる」
「そうなんだ……」
「この部屋の雰囲気も、最初は驚いたけど居心地いい。こたつっていいな。自然と距離が近づいて触れ合えるのが嬉しい。日本酒に演歌。夕羽ちゃんが好きな物なら、俺も好きになれるよ」
鶏の水炊きか……。
意外と庶民的だと思ってしまったのは、間違いだったとすぐにわかる。
「大体こんな感じの料理だった」と、彼がスマホで料亭のホームページを検索して見せてくれたのだが、芸術的に美しくて味の想像もつかない和食フルコースが【おひとり様、五万円〜】と書かれていた。
まじか……と値段に驚いて感想も言えない私が、サンマの蒲焼を箸でつまんで食べようとしたら、隣で口を開けている男がいる。
その口に入れてあげたら、「おいしい!」と笑顔で咀嚼していた。
「え、本当に?」と、つい聞いてしまう。
五万円以上の高級和食フルコースを食べたばかりの人が、缶詰のサンマをおいしいと思えるのが不思議だった。
けれども、にっこりと弧を描くその瞳に嘘をついているような雰囲気は見られず、私の箸を奪うと、今度は彼が私に食べさせてくれた。
「水炊きより、夕羽ちゃんとひとつの缶詰を分け合って食べる方が、ずっとおいしく感じられる」
「そうなんだ……」
「この部屋の雰囲気も、最初は驚いたけど居心地いい。こたつっていいな。自然と距離が近づいて触れ合えるのが嬉しい。日本酒に演歌。夕羽ちゃんが好きな物なら、俺も好きになれるよ」