ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
それを言うなら、ロミオだ。

よっしーと遊びたくて、三門家の屋敷に梯子をかけ、二階の窓から侵入を試みた不審者の私。

あの光景がシェイクスピアの舞台と重なって見えていたのなら、その伊達眼鏡を度入りにすることをぜひお勧めしたい。


「ふたつ目は、おっぱいの触り心地がいいところ」と、彼は真面目な声で話し続ける。


再会初日に『俺は胸の大小で女性の価値を決めるような男じゃない』とか、かっこいいこと言ってたけど、やはり単なる巨乳好きでは?

隙あればボインボインしてくるし、困った男だ。


「三つ目は、頼もしいところ」

「ちょっと待て。頼もしいは最初に言ったよ。早くも褒めどころが見つからないの? 残り九十八個はどこいった」


百は無理だと思っていたが、まさかの二個でギブアップとは、少々傷つく。

テーブルに頬杖をつきつつ、横目で睨んで非難の気持ちを伝えれば、なぜかクスリと笑われて、彼は眼鏡を外した。


「夕羽の最大の長所は、俺好みの可愛い顔と性格だよ」


また呼び名から、“ちゃん”が抜けてる……。

眼鏡を外すとなにかのスイッチが入るのか、その声には甘さが加わり、ガラス越しではない瞳は色っぽく、艶めいて見えていた。

心臓が大きく跳ねて、私は慌てて視線を五木様に戻し、湯飲み茶碗に口をつける。
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