ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
私は左手首の腕時計を、右手で隠しながら苦笑い。

「う、うん、まぁね」と曖昧に答えて、やっぱりいつもの安物をつけてくればよかったかと後悔していた。


高級ブランド品の腕時計もショルダーバッグも、よっしーがプレゼントしてくれた物で、彼氏からではないのだが、正直に友達にもらったと言った方が不自然に聞こえそうだ。

世間一般的に、ただの友達が高級品を贈るのは、常識ではないのだから。

彼は、一般人の枠からはみ出しているので仕方ないのだ。


言っておくが、私からブランド品を買ってほしいとねだったわけではない。

出張や会合で出かけた際のお土産と言って、週に一度程度の割合で、プレゼントをしてくれる。

物だけではなく、懐石料理や一流レストランでの食事やエステなど、最近の私は贅沢三昧だ。


ありがとうと言いつつも、本心ではそんなことをしなくていいのにと思う。

けれども私がお礼を言えば、彼は満面の笑みを浮かべて本当に嬉しそうにしてくれるから、断りにくい。

腕時計もバッグも服も、身につければ喜んでくれるし、部屋に置いたままにしておけば悲しそうな目をするので、こうして会社に持ってくるのだ。

< 44 / 204 >

この作品をシェア

pagetop