ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
この会議室の基本の机の並びは、横に二列、縦に八列とマニュアルに書かれている。

片付けというのはその状態に戻して、汚れていれば机や椅子を拭き、プロジェクターやホワイトボードを所定の場所に戻すことである。


さあ、やるかと、半袖ブラウスなのに腕まくりをする仕草をして気合を入れる。

長机の天板を折り畳んでいたら、後ろにドアを開ける音がした。

振り返れば、総務部の二十五歳男性、山田さんが入ってきた。

彼は三十人ほどの総務部の人員の中で一番若く、周囲に対していつもへりくだった態度だが、派遣社員の私よりは遥かに立場が上の、歴とした正社員である。


細身で男性にしては小柄な彼は、私より二、三センチ上背だ。

「浜野さん、手伝います」と椅子を重ね始めた彼に、「ひとりでも大丈夫ですよ。山田さんはどうぞお昼に入ってください」と遠慮したが、彼が手を休めることはない。

「力仕事を、女性の浜野さんひとりに押し付けるわけにはいきません」と、男らしい返事が笑顔とともに返ってきた。


「それじゃあ、一緒にお願いします」と答えて片付け作業に戻るも、内心では苦笑い。

女性扱いされてしまったよ。漁で鍛えた私の筋力と体力は男性相当なのに。

華奢な体型の山田さんと腕相撲したら、私が勝つだろうと思いつつも、その親切心を無下にしないために、手伝いの申し出をありがたく受け取ることにした。

< 46 / 204 >

この作品をシェア

pagetop