ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
右手で頭を掻きながら、ヘラヘラと笑って間抜けな自分の誤解をごまかそうとしたら、山田さんは笑ってくれた。


「浜野さん、ここに座ってください」と、椅子を引いて私に腰を下ろさせると、肩揉みを始める。


「あー、気持ちいい。なんか気を使わせてすみません。肩揉み、上手ですね」

「僕、おばあちゃん子で、よく揉んでたんで。かなり凝ってますね。胸が大きいというのは大変なんですね」


親切で優しい人だと思いながら、私は笑い話として巨乳を持った苦労を話す。

力と体力はあっても、走るのが苦手。胸が上下に大きく揺さぶられて走りにくいし、少々痛い。

洋服店に行っても、自分の体型に合うものがなかなか見つからないし、デスクワーク中は胸がキーボードに触れてしまい、いらない文字を打ち込んでしまう時がある。

そうならないように胸と机の距離を開ければ、猫背になって肩や背中が凝るのだ。


「男勝りな私には、似合わない胸の大きさで。中学生の時に急に大きくなり始めたんですけどね、思春期全開の男子にさえ“無駄パイ”と呼ばれてましたから」


昔のおかしな呼び名を思い出して口にしたら、山田さんのツボにはまったらしく、後ろでブッと吹き出して笑う声がする。

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