ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
椅子を鳴らして立ち上がった私は、山田さんを背中に隠すようにして社長と対峙し、私たちの関係性がばれないように気をつけつつ、事情を説明した。


「社長がなにをお怒りなのかわかりませんが、会議室の片付けはほぼ終わっています。今は昼休み中で、山田さんは私を気遣って肩を揉んでくれていただけです」


すると社長の鬼の仮面が剥がれかける。

不安げな目をして「揉んだのは、肩だけ……?」と、トーンダウンした声でおかしな質問をしてきた。


私と山田さんが声を揃えて「はい?」と聞き返したら、すぐに表情を厳しいものに戻したが、「ドアの外にまで笑い声が聞こえた。胸がどうの、と言っていたようだったが……」と答える声には動揺が隠しきれずに表れていた。


まさか、山田さんが私の胸を揉んで、ふたりでキャッキャしていたと思ったのだろうか?

いやいや、そんなことをするのは、山田さんではなく、よっしーでしょう。キャッキャと喜んだりはしないけれど。


つまりは私と山田さんが仲良くしていたのが、気に入らないようだ。

よっしーの怒りの原因に呆れつつ、「胸は揉まれていません。山田さんはとても真面目な人です」と真顔で答えれば、社長の険しい表情が和らいだように見えた。

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