ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「私の交友関係に口出し無用だよ。よっしーより親しい男友達なら、すでにいるし。もっくんとは、五年の付き合いだ」


すると目の前のイケメンは、目も鼻も口も全開にした愉快な顔で驚き、私の両肩を掴んで「もっくんて、どこの誰!?」と激しく揺さぶってきた。


「頭がもげそうだからやめておくれ。もっくんは演歌仲間だよ。なにを慌てているんだ」


もっくんとの付き合いは、上京してすぐに始まった。

出会いのきっかけは五年前の五木様のコンサートで、隣の席になったことだ。

話しが合うのなんのって、演歌愛トークが止まらない。

私は経済的な事情でファンクラブは五木様のものしか入っていないけれど、もっくんは他に五人の歌手のファンクラブに加入している。

坂本冬美や北島三郎のコンサートチケットを、私の分まで取ってくれるから、前列で生歌を聞けてとても感謝している。

地方コンサートにふたりで泊まりがけで出かけたこともあるし、カラオケや飲みにも行く親しい間柄なのだ。


そのような説明をするとよっしーは、安心するどころか、「そいつ、絶対に夕羽ちゃんのこと狙ってるよ!」と、さらに慌てる。

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