ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
電球交換に呼び出されていた時、津出さんには何度か突っかかってこられた。

それを恋心ゆえの嫉妬だと、私は解釈していたのだが、どうやら違うようだ。

そうか……津出さんはきっと、アレなんだ。


ある予想のもと、私はよっしーのスーツの腕を軽く引っ張って背伸びをし、「あのさ……」と耳打ちする。

津出さんのメイクや装飾品を、ちょっと褒めてみてくれないかと頼んだのだ。


「おふたりでなにをヒソヒソと! いくら恋人とはいえ、社内では慎んでください」と彼女はまた厳しい顔付きになる。

私の耳打ちに対し、真顔で軽く頷いた彼は、怒る彼女に向けて爽やかなイケメンスマイルを作って言った。


「津出、今日はいつもと口紅の色が違うな。似合ってるぞ。髪のリボンは交際相手からのプレゼントか? 上品なデザインでとても素敵だ」


途端にモジモジと恥じらい始めた彼女は、クールな印象が消えて可愛らしくなる。


「無理して褒めてくださっても、私は嬉しくなったりしませんからね」


私とよっしーは真面目な顔を見合わせて、同時に深く頷いた。心の中ではきっと同じことを思っているはず。

津出恋歌さんはただアレなだけで、社長に恋をしておらず、私を彼から遠ざけようともしていない。

隣では彼が、初めて知った秘書の一面に目を瞬かせながら、「ツンデレか……」と、ボソリと呟いていた。


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