ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています

その夜、よっしーは二十時半頃に帰宅して、私の部屋まで「ただいま」とわざわざ言いにきた後、すぐに階段を下りていった。

これから彼はシャワーを浴びて、夕食を取るはず。

Tシャツにスウェットのズボンという女子力の低い格好をした私は、三十分ほどしてから部屋を出て一階に下りた。

手に持っているのは、ひとり分の炒飯。作り立てなので、香ばしい湯気が立ち上っている。


同棲生活はもうひと月半が経つというのに、私は一階のリビングに数回しか入ったことがない。

それは彼の方から、私の部屋に来ることが多いせいだ。


リビングへ繋がるドアをノックして、少し開けて顔だけ覗かせ、「ちょっといい?」と声をかけた。

シャワーを浴びたての彼は、ソファに座って私に背を向けている。

濡れた髪をバスタオルで拭きながら、肩越しに振り向くと、「どうぞ」と笑顔を見せてくれた。


「お邪魔します」と中に入って、豪華な部屋だと改めて感じる。

広さは五十畳ほどもあり、セレブが好きそうなホームパーティーなるものを開くには充分であろう。

入って正面には東京の夜景が一望できる開口の広い窓があり、左側には十数人でテーブルを囲めそうなソファセットがある。
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