ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「夕羽ちゃん、食べたい惣菜ある?」と普通の調子で問いかける彼に、手の甲でその肩を軽く叩いて「おい!」とツッコミを入れてしまった。
スルーかい。私の本気の心配など、無用だということか。
ムッとして席を立とうとした私だが、腕を掴まれ引き止められる。
そして彼の箸が海老真薯をつまんで、私の口に押し込んだ。
フワフワとしたすり身の中の、プリプリとした海老の食感がたまらない。
出汁醤油の餡も上品で、これは美味しい。一杯やりたくなる。
食べ物につられてうっかり気を緩めたら、彼はニコリと人懐っこい笑みを浮かべて、「ありがとう」と言った。
「心配してくれたんだね。夕羽ちゃんの気持ちは嬉しいよ。だけど、やり方を変えられない事情がある。そんなことをすれば、祖父に祟られそうだ」
「どういうこと……?」
聞けば、社内でのやたらと厳しい顔は、三門家の家訓らしい。
帝重工の元となる会社、帝商事が誕生したのは明治維新の頃という古い話なのだが、戦後のGHQ指導の下で一度解体され、帝重工として生まれ変わった。
その経営規模は、帝商事であった時とは比べものにならないほどに小さく、大企業とは言えないものであったらしい。
それが二代目の、よっしーの祖父が経営者となってからは、かつての勢いを取り戻し、事業規模も年商も数十倍に膨らんだのだとか。
スルーかい。私の本気の心配など、無用だということか。
ムッとして席を立とうとした私だが、腕を掴まれ引き止められる。
そして彼の箸が海老真薯をつまんで、私の口に押し込んだ。
フワフワとしたすり身の中の、プリプリとした海老の食感がたまらない。
出汁醤油の餡も上品で、これは美味しい。一杯やりたくなる。
食べ物につられてうっかり気を緩めたら、彼はニコリと人懐っこい笑みを浮かべて、「ありがとう」と言った。
「心配してくれたんだね。夕羽ちゃんの気持ちは嬉しいよ。だけど、やり方を変えられない事情がある。そんなことをすれば、祖父に祟られそうだ」
「どういうこと……?」
聞けば、社内でのやたらと厳しい顔は、三門家の家訓らしい。
帝重工の元となる会社、帝商事が誕生したのは明治維新の頃という古い話なのだが、戦後のGHQ指導の下で一度解体され、帝重工として生まれ変わった。
その経営規模は、帝商事であった時とは比べものにならないほどに小さく、大企業とは言えないものであったらしい。
それが二代目の、よっしーの祖父が経営者となってからは、かつての勢いを取り戻し、事業規模も年商も数十倍に膨らんだのだとか。