溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「おかえり」

額にふれる唇に不意に泣きそうになったけれど、堪える。

「遅くなってごめんなさい。
ちょっと寄り道してました。
すぐにごはんにしちゃいますね」

見上げると、レンズの奥の瞳と視線がぶつかった。
じっと見つめる黒い瞳は、私の心の奥まで覗いているみたいで、手のひらがじっとりと汗ばんでくる。

「今日、尾上となにかあったのか」

「……なにもないですよ」

つい、視線を逸らしてしまうと、顎を掴まれた。
上を向かせるとまた、じっと見つめてくる。

「尾上も様子が変だった」

きっと尾上くんは私を心配してくれたのだろう。
会話は聞いてないだろうが、洋の前で私はあきらかに怯えていたのだから。

黙って視線を彷徨わせるばかりの私から蔵人さんは視線を逸らさない。
強制的に上を向かされている首がだんだんと痛み出す。
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