溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
さわさわと確認するように私のあたまをさわる蔵人さんからは今日も、小雪の臭いがしている。

「暑いんで、思い切って切りました」

「……そうか」

言葉を失うほど酷く驚いている蔵人さんに、最後の望みの糸がぷつんと切れた。

まだ信じたかったのだ、全部小雪が勝手に言ってるだけで蔵人さんにその気もなければそんな事実もないって。

でも蔵人さんは私を小雪の代わりにしてたんだって、再確認させられただけだった。

「……私は小雪じゃない」

蔵人さんの前に記入ずみの離婚届にはずした結婚指輪を重ねて滑らせる。
それを見た蔵人さんは眼鏡の下の、右の眉を僅かにあげた。

「どういう意味だ?」

冷静な蔵人さんの声に、一気に感情メーターが振り切れる。

「私は小雪じゃない!
小雪の代わりなんかになりたくない!」
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