天使は金の瞳で毒を盛る
「…くせに」

榛瑠が何か呟きながら体をずらした。私は慌ててすり抜けてベットから降りる。

服の乱れをなるべく手早く直す。死ぬほど恥ずかしい、と思う。

榛瑠の悪癖忘れてた。でも、よりによって、私に手を出すなんて!

ちらっと彼をみると、ふてくされたように布団に包まっている。

なによ!ふてくされたいのは私の方よ!

私は彼に背を向けてドアへ向かった。早くここを出よう。ほんとにもう、なんでこんなこと…

「一花」

後ろから呼ぶ声がした。でも、知らない、無視。

だいたいお嬢様に手を出すなんて時代が時代なら切腹よ!切腹!

「お嬢様」

そりゃあね、私だって拒まなかった…じゃなくて、うんと、流された、えっと、けど、でもでも…

…しょうがないじゃない、免疫力ゼロなんだもん!

「一花っ」

「なによっ」

榛瑠が小さく叫ぶように名前を呼ぶ声に、思わず反応して振り返ってしまった。

彼はベットの上で下を向いたまま手をついて上体を起こしていた。頭の半分まで被っている布団で表情がよくわからない。

「お嬢様、その、」

榛瑠らしくなくボソボソっと言う。

「ごめん…なさい」

「…大人しく寝てなさい!」

私はわざと大きな音を立てて戸を閉めた。そのまま真っ直ぐ前を向いて廊下を進む。

「…」

考えない、考えない、忘れよう、今すぐ、うん。ぜんぶ…

うん…ムリ、だ。

私はその場で廊下の壁に手をついた。

なんなの、あれ?なんなの?なんであんなに心細げな声で謝るの?わざと?なに?

あんな風に言われたら怒れないじゃない!

なんで私が一瞬でも、かわいそうかもとか思わないといけないのよ!

思い出すと、顔がほてって、ドキドキする。
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