天使は金の瞳で毒を盛る
どうしよう、動けない。

榛瑠の手に力が加わる。私の頭が降りていく。

唇が軽く触れる。それだけで体が一瞬しびれる。ああそうか、私、知らないうちに毒を盛られていたんだ。

榛瑠が私を抱きとめて、気づくと、彼が上から見下ろしていた。

相変わらず無表情な綺麗な顔で。

顔が近付いてきて、目を閉じる。首筋に触れるものがあった。それから、頬、額、まぶた…。

痺れたように動けない。この、綺麗な天使に、少しづつ、毒を盛られていたんだ。気づかないうちに少しづつ。

そして、気づいた時には動けなくなっている。

唇に、ふれた。舌。

激しくはなかった。でも、優しくもない。

私、食べられてる。

唇が離れた。思わずため息がもれる。目を開けると、薄っすらと笑みを浮かべながら榛瑠が私を見下ろしていた。

なんでこの男は、こんなにも美しくて、そして残酷なんだろう。

目をあけていられない。

また、キスされる。唇に、首筋に、鎖骨に…。

あつい。なんだかもう、なにもかもわからない。

涙がにじむ。

…榛瑠…。

その時、ザンッというような音が耳に入った。ビクッとして目を開ける。理由を探して視線がさまよう。その音は窓に強風のために雨が叩きつけられた音だった。

急に、かたまりで理性が戻ってきた。

「ちょっと、待って、榛瑠ダメ、どいて」

彼が動きを止める。でも、どいてくれない。

「ねえ、どいてってば、聞こえてる?」

榛瑠は黙ってそのまま私を抱きしめた。

そういえば、この人って…。

「榛瑠お願いだから、どいて」

「…やだ」

彼は私を抱きしめたまま言った。

ちょっと、やだってなによ、ああ、忘れてたけど、この人!

「榛瑠!調子悪い時に女の子に触れたがるくせやめなさいって、前も言った!早くどきなさい!」
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