天使は金の瞳で毒を盛る
酩酊の御令嬢
…なんだか随分ぼんやりしている。 暗いし気持ち悪い。

「大丈夫?少しだけ頑張って歩いてね。」

ああ、私歩いてるんだ。この声わかる、名前、なんだっけ。えっと…、おざ…、

目が開かない。いや、開いてるのかな、よくわからない。車の音がする。外?気持ち悪い。

あたし、動いちゃいけないって言われてたのになんで歩いてるの?止まらなくちゃ。

「足動かして、一花さん、すぐ休めるからね」

でも、止まりたいのよ…。お願い、止まって。

「ちょっと、あんた、その子どうしたの?どこ連れてく気?」

急に違う声がした。太い声なのになんだか光みたいな…。ああ、私、今の今まで怖かったんだね…。

でも、誰?見えないよ。

「ちょっと酔っちゃったみたいで。でも、面倒見ますし、大丈夫ですから」

「それにしては変ね。救急車呼べば?」

「大丈夫。そこどいて」

私に肩を貸している人がまた歩き出す。やめて…、行きたくない。お願い。

でも、声に出せない。

そしたら、歩みが止まった。

「悪いけど、行かせらんない。あ、悪くないわ、悪いのはあんただもんね」

「どけよ」

「その子置いていくなら考えるわ。仏心で言ってあげるけど、その方があんたのためよ」

「ふざけるな」

「あーあ、でも、もう遅いかあ、とにかくその子置きなよ。辛そうよ、随分」

「おい、なにを!」

誰かに抱きかかえられた。大きい、女の人?なんか温かい。包み込まれるみたいな…。

それから地面に降ろされたのがわかる。座ってられなくて横倒しになる。硬くて、冷たい。でも、楽になる。
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