突然現れた御曹司は婚約者
そこまで気持ちは固まってない。

でも蓮は大げさに残念がる。


「なんでだよ!そこ重要なのに」


怒りながらも笑っている蓮を前に気持ちが浮き立っていく。

お腹も空いて来た。


「いただきます」


箸を持ち直し、フカヒレから頂く。


「美味しい」
「良かった。食事は大事だからな。ほら、これも食べろ」


薄餅にタレを付けて北京ダックやネギといった具をのせて巻いてくれたものが渡された。

それを受け取ろうと手を伸ばす。

でもなぜか避けられてしまった。


「私に、じゃなかったですか?」
「栞にだよ。ただし、あーん、だ」


なにそれ。

あーん、って。

子供じゃないんだから。


「変ですよ」
「いいから。ほら。あーん」


しつこく口元に持ってくるのでおとなしく口を開けると北京ダックと一緒に蓮の指にも唇が触れてしまった。


「ごめんなさい」


北京ダックの入った口を押さえてすぐに謝るも、蓮は首を小さく左右に振って私に視線を据えたままその指をペロッと舐めた。

それがやけに色っぽくて、艶っぽくて、鼓動が加速する。

こんなんじゃ、キスなんて到底出来っこないってつくづく思う。

それに分かっていたことだけど、蓮は人目を惹く男性だ。

一緒に歩いていれば必ずと言っていいほど女性が振り返る。
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